遠くて近い距離
 いつだったか、あいつが酷く遠く感じられた。

 近くにいるのに遠くて、この手は届きそうになくて。

 酷く、もどかしくて。

 ああなんでおまえそんなとおくにいるんだとか、文句を言いたかったけれど、言ったところで意味なんて通じないだろうから、とか悶々としていたら。

 あいつが気付いてこっちきてどうしたとか聞いて。

 そんなに難しい顔をしていたのか熱でもあるのかとか聞かれて。

 触れてきた掌に。

 ああなんだ、遠くないじゃないかと思いなおして。

 なんだか馬鹿らしくなって笑った。

 ……そしたら何か変な顔されたから殴ってやった。


(あるとき親友がとても遠くに感じられたけれど
何だ実は結構近かったんじゃないかとかそんな話)

UP:06/04/15
加筆修正:06/07/01
昔の幸せ今の幸せ
 いつも、この手は、何かを掴む事無く、空を切る。

 そのたびに、私は、自分の弱さを思い知る。

 私が天使だったときから、そう。

 天使だったとき、人を救うことが出来なかった。
 いくら手を差し伸べても人は不幸になっていって
 救うことも出来ず私はいつも見ているだけで
 酷く自分の無力さを思い知らされて
 ひとひとりすくえずになにがてんしだと

 そして私は優しい悪魔を失った。


 向こうで小さな彼が手を振っていて。

 手を振りながら走るものだから何時転ぶかと冷や冷やして。

 案の定転んだから持ち上げて起こしたらいきなり抱きついてきてへらりと笑ったから。

 今はこの平穏と幸せを失くすことのないように守ろうと。

 それすら奪うというのなら、私は世界だって神だって敵に回すのだろう、と思いながら。

 小さく口の端に笑みを乗せた。


(……なんだろうこれ!)
UP:06/04/15
加筆修正:06/07/01