前書き
Title by ROMEA(http://rei.my-sv.net/r/)
彼女は三割引で売られていた
図書館で、しぃの女の子と会った。
普通の、普通過ぎる子だった。
本が好きで、僕ともよく話した。
毎週水曜、午後二時、窓際の席で。
いつからだろうか、気付いたら彼女は図書館に来なくなっていた。
引っ越したのかな、とか、他の図書館に行ってるのかな、と思った。
その日はそれきり彼女の事は忘れて本に没頭した。
その日の帰り道、僕は彼女を見かけた。
胴体と首から上は分かれていて、僕の見たことのない表情をしていたけれど。
彼女は肉屋で、三割引で売られていた。
僕は何も思わなかった。
ただ、図書館で彼女が来なくなったと気付いたときと同じように、
ああ、死んじゃったんだ、
とだけ、
Paradox=Wicked=Exile
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
白いパレットは汚された
仕事。
いつものように依頼を請け、いつものように殺しに行った。
標的の女は絵描きだった。
俺がそこに来たときも、真っ直ぐカンバスを見つめて、絵を描いていた。
パレットはまだ使っていないのか、白いまま、だった。
いつものように口を塞いで喉を掻き切って頭を潰して、
白いパレットは、女の血で、脳漿で、肉塊で、赤くなった。
その汚された白いパレットを見て、何故か吐き気がした。
まるで初めて人を殺したときのように。
もう、そんな、綺麗な人間では、ないというのに。
とうに汚れてしまっているのに。
明日は丁度予定がないはず。
久しぶりに教会へ行こう、と、思った。
Rius=Ivy
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
43回の銃声のあとに
銃声、が、聞こえた。
16回。
続けざまに、15回。
そして、12回。
中途半端な43回の銃声のあと、また誰か死んだんか、と思う。
弱肉強食。弱きは死すべし、強きは生くべし。
それがこの街のルール。
もっと死ねばええ、と思う。
それが俺の望み。
大切なもの以外、いらない、なんて、エゴ。
そして俺はまた引鉄を引く。
Haluka=Stauros
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
千の心臓
よくやるなぁ、と、思う。
その男は千、心臓を集めていた。
悪魔崇拝だの魔王降臨だのぐだぐだ言ってたけど、まぁ要するに頭のネジがぶっ飛んでる男だった。
家族から、その男を殺してくれ、と依頼されたのだ。
まあ、そういう依頼をした家族の気持ちは、まぁわかる。誰だって嫌だ、こんな家族。
たとえ愛した夫であろうと、こんな行為に走ってはヒくだろう。
しかもこの男の家は、結構お偉い家系なのだそうだ。
――大方、家名に泥を塗った男なぞ殺してしまえ、というところ。
共感はしないけど、“家”に殺される男にあたしは少しだけ同情して、即死させてあげた。
依頼完了のあと、かなりの報酬をもらったけれど、すっきりしなかった。
男のように千の心臓を集め、魔王でも悪魔でも召喚したら気分は晴れるだろうか、と思って、やっぱりやめた。
結局あたしはいつものように、報酬を持って買い物に行った。
Adelheid=Ortrud
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
水底へ沈む死者
退屈だったから、外に出た。
苛ついたから、誰か殺した。
肉塊が、ばしゃりと音を立てて池に沈んだ。
水底へ沈む死者は虚ろな目で空を見ていた。
死者は空へ何を見たのだろう。
神だろうか。
愛するものだろうか。
遣り残したことだろうか。
それともただ空の青を見ていたのだろうか。
そんなこと私には知る由も無いし、知りたくもないから、その思考を打ち切った。
そして浮かび上がる死者の魂を捕らえた。
あまり綺麗だとは言いがたくて、手を離して、そのまま逃がした。
Sariel
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
夢の中で君を百回殺した
同じような夢を、何十回も見た。
手段は違えど、いつもアイツを殺す夢。
おれはその夢を見るたび歪んだ笑みを口に乗せた。
殺すパターンは尽きない。
どうやって殺そうか、いつも考える。
どんな残虐な方法で殺してやろうか。
すぐに息絶えなどさせず、じわじわと嬲るように。
アイツの苦痛に歪む顔が見たい。
おれを裏切ったことを後悔させたい。
元通りの関係なんて、望んじゃいない。
戻るはずが無い。そう、絶対に。
だからおれがアイツを殺す。
おれが殺す。誰にも殺させない。
おれが殺すから意味があって、誰かが殺すんじゃ意味が無い。
他の誰でもない、おれが殺すのだ。
この手で殺してやる。
そのためだけに、おれは夢の中で、アイツを百回殺すのだ。
Risky=Murder=Rockbottom
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
「じゃあ、愛がなにか教えてよ」
愛って、何?
私の母は、閉じ込めて愛することしか教えてくれなかった。
私の父は、打って愛することしか教えてくれなかった。
祖父母は、柔らかく微笑んで愛することしか教えてくれなかった。
皆、私の愛は、狂っている、と言う。
彼女も、妹も、私を、否定、しなかったけれど。
私の愛が狂っているというのなら。
愛が何か、教えてよ。
ずっとずっと、傍に居る、なんていう。
私は、こんな愛し方しか、知らないから。
ごめんね、ナーシャ。でも、愛しているよ。それだけは、わかって、ねえ
Luka=Cherno=Klava
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
天国ではお幸せに
縁側で茶を飲んでいると、ふわり、一つ魂が飛んできた。
色はあまり綺麗とは言えないが、綺麗な球体をしていた。
最近死んだのだろう、と予想をつけて僕は手を伸ばした。
水越しの、空。
余りいい生活をして来なかったようだ。
死ぬ前に水に落ちて、そこから空を、見た。
一瞬だけ見えた、この魂の持ち主を殺した犯人は、焔色の目。
まあ、興味はないのだけれど。
魂はふわふわ僕の周りを飛んで、興味深そうに周囲を見た。
東洋のものは珍しいのだろう。
魂が十分楽しんだろうところで、僕は魂に楽しめたかい、と声をかけた。
魂が頷くように動く。
僕はにこりと微笑んで、魂に手を差し伸べた。
消え逝く魂に、僕は天国ではお幸せに、と声をかけた。
Embryo
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
世界の終わりで君が笑っているのなら
僕らの関係は、依存、という言葉がしっくりくる。
僕は彼女がいないと生きていけないし、彼女は僕がいないと生きていけない。
何て、不毛な、関係、だ。
彼女を生かしても意味なんてないと知っている。
もう二度と、彼女が正気に戻らないことだって、知ってる。
全部、知ってる。
知っていて、やっている。
何て不毛。何て意味の無い。
見返りなんてない。意味なんて無い。
ただ、彼女が生きて、僕のそばにいればいいだけ。
世界が終ろうとも、君が笑っているのなら、僕はなんだってしよう。
そう、世界の終わりで君が笑っているのなら。
それが僕の愛。
Aile=Alwe
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
泣き虫の水溜り
ぽたりひとつ、涙が落ちた。
それを皮切りにまたひとつまたひとつと落ちてゆく。
そして雫は大地に吸い込まれ。
ただひたすらに、ぽたりぽたり、と、今日もまた天へ昇っていった誰かの魂を哀悼するために。
涙は元来、自分のために流すものだけれど、自分は人の形をするだけのものだから、多分これは、この涙は、ただ死んだ者へと送る純粋な哀悼。
生きとし生けるものが必ず迎える最期へ向ける、さいごのはなむけ。
今日は誰もいない場所にひとり立っていて、いつも涙を止めてくれるあの幼馴染はいなくて、涙が止まる頃には、すっかり日も暮れていて、足元には小さな水溜り。
あまり遅くなると、お人好しの同居人が心配するだろうから、泣き虫の水溜りを勢いよく踏んで、駆けた。
Kikimola=Kiksik=Masha
UP:06/07/02
加筆修正:06/07/02
夕暮れの不安な街に立っている
今日は私にしては珍しく、早々に執筆を切り上げて散歩に行くことにした。
一つ息を吐いて、玄関を出て少し歩くと、眩しく、鮮やかな橙が私の眼を射る。
焔のように鮮やかで、血のように毒々しい。
地平線の向こうへ沈みながら、それでもなお、気高さを失わない光。
こんな夕暮れを見ると、私はどこか不安になる。
私には、満月の呼ぶ狂気より、夕暮れの呼ぶ狂気の方が、恐ろしく思えるのだ。
ここは強者と、狂者の街。
私は夕暮れの、不安な街に立っていた。
Aristide=Vretblad
UP:06/07/02
加筆修正:06/07/02