01.彼女は三割引で売られていた
02.白いパレットは汚された
03.43回の銃声のあとに
04.千の心臓
05.水底に沈む死者
06.夢の中で君を百回殺した
07.「じゃあ、愛がなにか教えてよ」
08.天国ではお幸せに
09.世界の終わりで君が笑っているのなら
10.泣き虫の水溜り
11.夕暮れの不安な街に立っている
 
前書き









Title by ROMEA(http://rei.my-sv.net/r/)









 

彼女は三割引で売られていた

 図書館で、しぃの女の子と会った。
 普通の、普通過ぎる子だった。
 本が好きで、僕ともよく話した。
 毎週水曜、午後二時、窓際の席で。


 いつからだろうか、気付いたら彼女は図書館に来なくなっていた。
 引っ越したのかな、とか、他の図書館に行ってるのかな、と思った。
 その日はそれきり彼女の事は忘れて本に没頭した。







 その日の帰り道、僕は彼女を見かけた。
 胴体と首から上は分かれていて、僕の見たことのない表情をしていたけれど。


 彼女は肉屋で、三割引で売られていた。





 僕は何も思わなかった。

 ただ、図書館で彼女が来なくなったと気付いたときと同じように、

 ああ、死んじゃったんだ、

 とだけ、

Paradox=Wicked=Exile
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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白いパレットは汚された

 仕事。
 いつものように依頼を請け、いつものように殺しに行った。


 標的の女は絵描きだった。
 俺がそこに来たときも、真っ直ぐカンバスを見つめて、絵を描いていた。
 パレットはまだ使っていないのか、白いまま、だった。

 いつものように口を塞いで喉を掻き切って頭を潰して、

 白いパレットは、女の血で、脳漿で、肉塊で、赤くなった。
 その汚された白いパレットを見て、何故か吐き気がした。

 まるで初めて人を殺したときのように。

 もう、そんな、綺麗な人間では、ないというのに。
 とうに汚れてしまっているのに。



 明日は丁度予定がないはず。
 久しぶりに教会へ行こう、と、思った。

Rius=Ivy
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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43回の銃声のあとに

 銃声、が、聞こえた。

 16回。
 続けざまに、15回。
 そして、12回。

 中途半端な43回の銃声のあと、また誰か死んだんか、と思う。
 弱肉強食。弱きは死すべし、強きは生くべし。
 それがこの街のルール。

 もっと死ねばええ、と思う。
 それが俺の望み。
 大切なもの以外、いらない、なんて、エゴ。



 そして俺はまた引鉄を引く。

Haluka=Stauros
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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千の心臓

 よくやるなぁ、と、思う。

 その男は千、心臓を集めていた。
 悪魔崇拝だの魔王降臨だのぐだぐだ言ってたけど、まぁ要するに頭のネジがぶっ飛んでる男だった。
 家族から、その男を殺してくれ、と依頼されたのだ。
 まあ、そういう依頼をした家族の気持ちは、まぁわかる。誰だって嫌だ、こんな家族。
 たとえ愛した夫であろうと、こんな行為に走ってはヒくだろう。
 しかもこの男の家は、結構お偉い家系なのだそうだ。
 ――大方、家名に泥を塗った男なぞ殺してしまえ、というところ。
 共感はしないけど、“家”に殺される男にあたしは少しだけ同情して、即死させてあげた。


 依頼完了のあと、かなりの報酬をもらったけれど、すっきりしなかった。

 男のように千の心臓を集め、魔王でも悪魔でも召喚したら気分は晴れるだろうか、と思って、やっぱりやめた。

 結局あたしはいつものように、報酬を持って買い物に行った。

Adelheid=Ortrud
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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水底へ沈む死者

 退屈だったから、外に出た。
 苛ついたから、誰か殺した。
 肉塊が、ばしゃりと音を立てて池に沈んだ。
 水底へ沈む死者は虚ろな目で空を見ていた。

 死者は空へ何を見たのだろう。
 神だろうか。
 愛するものだろうか。
 遣り残したことだろうか。
 それともただ空の青を見ていたのだろうか。

 そんなこと私には知る由も無いし、知りたくもないから、その思考を打ち切った。
 そして浮かび上がる死者の魂を捕らえた。

 あまり綺麗だとは言いがたくて、手を離して、そのまま逃がした。

Sariel
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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夢の中で君を百回殺した

 同じような夢を、何十回も見た。
 手段は違えど、いつもアイツを殺す夢。
 おれはその夢を見るたび歪んだ笑みを口に乗せた。

 殺すパターンは尽きない。
 どうやって殺そうか、いつも考える。
 どんな残虐な方法で殺してやろうか。
 すぐに息絶えなどさせず、じわじわと嬲るように。

 アイツの苦痛に歪む顔が見たい。
 おれを裏切ったことを後悔させたい。
 元通りの関係なんて、望んじゃいない。
 戻るはずが無い。そう、絶対に。

 だからおれがアイツを殺す。
 おれが殺す。誰にも殺させない。
 おれが殺すから意味があって、誰かが殺すんじゃ意味が無い。
 他の誰でもない、おれが殺すのだ。

 この手で殺してやる。



 そのためだけに、おれは夢の中で、アイツを百回殺すのだ。

Risky=Murder=Rockbottom
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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「じゃあ、愛がなにか教えてよ」

 愛って、何?

 私の母は、閉じ込めて愛することしか教えてくれなかった。
 私の父は、打って愛することしか教えてくれなかった。
 祖父母は、柔らかく微笑んで愛することしか教えてくれなかった。

 皆、私の愛は、狂っている、と言う。
 彼女も、妹も、私を、否定、しなかったけれど。




 私の愛が狂っているというのなら。

 愛が何か、教えてよ。

 ずっとずっと、傍に居る、なんていう。
 私は、こんな愛し方しか、知らないから。

 ごめんね、ナーシャ。でも、愛しているよ。それだけは、わかって、ねえ

Luka=Cherno=Klava
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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天国ではお幸せに

 縁側で茶を飲んでいると、ふわり、一つ魂が飛んできた。
 色はあまり綺麗とは言えないが、綺麗な球体をしていた。
 最近死んだのだろう、と予想をつけて僕は手を伸ばした。

 水越しの、空。

 余りいい生活をして来なかったようだ。
 死ぬ前に水に落ちて、そこから空を、見た。
 一瞬だけ見えた、この魂の持ち主を殺した犯人は、焔色の目。
 まあ、興味はないのだけれど。

 魂はふわふわ僕の周りを飛んで、興味深そうに周囲を見た。
 東洋のものは珍しいのだろう。

 魂が十分楽しんだろうところで、僕は魂に楽しめたかい、と声をかけた。
 魂が頷くように動く。
 僕はにこりと微笑んで、魂に手を差し伸べた。

 消え逝く魂に、僕は天国ではお幸せに、と声をかけた。

Embryo
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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世界の終わりで君が笑っているのなら

 僕らの関係は、依存、という言葉がしっくりくる。

 僕は彼女がいないと生きていけないし、彼女は僕がいないと生きていけない。
 何て、不毛な、関係、だ。
 彼女を生かしても意味なんてないと知っている。
 もう二度と、彼女が正気に戻らないことだって、知ってる。

 全部、知ってる。
 知っていて、やっている。

 何て不毛。何て意味の無い。

 見返りなんてない。意味なんて無い。
 ただ、彼女が生きて、僕のそばにいればいいだけ。




 世界が終ろうとも、君が笑っているのなら、僕はなんだってしよう。
 そう、世界の終わりで君が笑っているのなら。

 それが僕の愛。

Aile=Alwe
UP:06/05/07
加筆修正:06/07/02
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泣き虫の水溜り

 ぽたりひとつ、涙が落ちた。
 それを皮切りにまたひとつまたひとつと落ちてゆく。
 そして雫は大地に吸い込まれ。

 ただひたすらに、ぽたりぽたり、と、今日もまた天へ昇っていった誰かの魂を哀悼するために。

 涙は元来、自分のために流すものだけれど、自分は人の形をするだけのものだから、多分これは、この涙は、ただ死んだ者へと送る純粋な哀悼。

 生きとし生けるものが必ず迎える最期へ向ける、さいごのはなむけ。

 今日は誰もいない場所にひとり立っていて、いつも涙を止めてくれるあの幼馴染はいなくて、涙が止まる頃には、すっかり日も暮れていて、足元には小さな水溜り。
 あまり遅くなると、お人好しの同居人が心配するだろうから、泣き虫の水溜りを勢いよく踏んで、駆けた。

Kikimola=Kiksik=Masha
UP:06/07/02
加筆修正:06/07/02
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夕暮れの不安な街に立っている

 今日は私にしては珍しく、早々に執筆を切り上げて散歩に行くことにした。

 一つ息を吐いて、玄関を出て少し歩くと、眩しく、鮮やかな橙が私の眼を射る。
 焔のように鮮やかで、血のように毒々しい。
 地平線の向こうへ沈みながら、それでもなお、気高さを失わない光。
 こんな夕暮れを見ると、私はどこか不安になる。

 私には、満月の呼ぶ狂気より、夕暮れの呼ぶ狂気の方が、恐ろしく思えるのだ。


 ここは強者と、狂者の街。

 私は夕暮れの、不安な街に立っていた。

Aristide=Vretblad
UP:06/07/02
加筆修正:06/07/02
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