Kingfisher!

「あああああああー!!!!」

 耳に痛い絶叫。声に覚えはある。
 しかし関わり合いになりたくない類なのであえて無視した。

「ちょお待てそこのクソトリ! 止まらんかアホウ!」

 ……トリ?
 鴉と呼ばれたことは多々あれど、トリと呼ばれたことはない。しかもクソって何だクソって。
 あまりの扱いに自然と足が止まり、抗議のために振り返る。
 声の主の男はいつもより険しい顔でずんずんと歩み寄り、真正面でぴたりと止まってオレの胸倉を掴んで顔を引き寄せる。
 心なしか視線が、いつもより下に見えるのは気のせいだろうか。

「お前ッ……今、身長何センチやッ?!」
「……胸倉を掴んでまで聞くことかそれは……?!」
「ええから答えやアホウ!」

 声に珍しく焦りの色が滲んでいる。目もいつもより必死だ。
 それに気圧されて、思わず呟いた。

「……182、だ」

 瞬間、奴の顔が歪んだ。
 掴んでいた胸倉をぱっと放し、じりじりと離れる。
 奴の握り締められた拳がわなわなと震えている。

「う、う、う、嘘やッ……!」
「……こんなものに嘘を吐いてどうする」

 溜息を吐いて答えると、奴の顔が可哀想なぐらい真っ青になる。
 瞬間、最初に感じた視線の違和感と、身長への拘りの意味が解った。

「……ハルカ、お前、もしかして、縮ん」
「それ以上言うたらあかんーッッ!!!!!!!」

 近くで叫ばれて、思わず耳を塞ぎ顔を顰める。
 当の本人は肩で息をしながら、涙目できっとオレを睨んだ。

「バカ――――!!!!!」

 お前は女か!
 心の中でそう罵りながらも、踵を返して走り去っていく奴の背中を見て、そういえばバカと言われたのはこれが初めてだと気付いた。
ハルカの身長変更に伴い、ネタ。
関西地方の人はバカとは言わないらしいので、関西は常時アホと言います。だから関西がバカって言うのは超珍しいのよ!
タイトルは坂本真綾「少年アリス」収録曲より。カワセミ。深い意味はありません。
UP:06/06/17
加筆修正:06/07/02