03 // 歪力

 ――こん。

 まだ、抵抗している。
 俺の中の機械ではない部分が、まだ。
 諦めろ。抵抗してどうなる。
 考える事は怠惰だ。ならば命令を待てば良いじゃないか。
 認めろ。さぁ、今すぐ。
 降伏しろ。

 ばん。

 扉を蹴り開けるような、そんな音が背後からした。

「リウス!」

 元気な主の声が響く。真っ暗な部屋に光が入る。
 ゆっくりと振り向くと、案の定主が居た。
 一体の人形と一体の機械の主である彼女は、自身を“神”と自称していたという記録が、自らのメインデータ内にあった。

「…………」

 無言で先を促すと、彼女ははしゃいだ子供のように頬を紅潮させて手を振り回した。
 “神”を自称してはいるものの、まだまだ世間知らずのお嬢様であるということも記録の中にあった。

「あのなあのなっ、外が明るいんだ外が! 日の光が綺麗だぞ!
 私はあんなの初めて見た! 眩しすぎるぐらいだ!」
「……我々の世界は“裏”。陰陽の掟に従うのならば我々が陰、こちらが陽。
 我々の世界が暗闇に包まれているのは陰世界ゆえ。こちらの世界が明るいのは陽世界ゆえ」
「む、難しい事は解らないぞリウス! もうちょっと解りやすく説明しろ!」

 駄々をこねる子供のような口調で主は言った。
 ……そんなに難しい事を言っているつもりはなかったのだが。
 人――とはまた違うが――と機械とはやはり感覚が違うのだろうか。

「……つまり、我々の世界の反転であるからこちらの世界は、明るい。
 逆を言えばこちらの世界が明るいから我々の世界は暗い」
「……あぁ! そういうことか! よくわかったぞ、ご苦労だったなリウス!」

 ……そんなに言われるほどのことはしていないのだが。
 主は頭が弱いわけではないのだが、どうもまだ幼い。
 頭は良いはずなのに箱入り教育のお陰かものを知らない。知らなさ過ぎる。
 まぁ、それで別段困るというわけではないのだが。
 俺は機械だから。命令を聞くだけだ。

「リウス!」

 何事かと思って顔を上げると、主が手を差し出した。
 何をしろというのだろう。

「お前も外へ出てみろ! 気持ち良いぞ!」
「……機械に快不快の機能はない」
「知っている! 私の気分の問題だ、さぁ行くぞ!」

 主は俺の手を掴むと、半ば引き摺るようにして暗い部屋から引っ張り出した。
 ――確かに、明るい。
 眩しすぎるぐらい、という表現はあっている。
 主は俺の手を離し、駆け出した。
 ああしていると“神”を自称するとは思えないほど子供だ。元々子供だが。

 本来なら、子守は機械ではなく人形の仕事だ、が。
 たまに、本当にたまにならば、こういうのも、良いかもしれない。
裏さちこと裏リウス。
子供っぽさと高慢度が上がったさちこと機械度が上がったリウスです。

裏R→機械度がかなり上がった無駄な事喋らない
裏S→子供高慢自称神WorldOfMe世間知らずお嬢 (幼少期サリエルがそのまま大きくなっt(ry)

UP:05/11/16
加筆修正:06/06/30